Memento mori
Teng jing-official part.2

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Louis Wain(ルイス・ウェイン) 反復と敵意

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Louis Wain(ルイス・ウェイン)は1860年8月5日にロンドンのクラーケンウェルにおいて生まれた。6人兄妹の長兄であり、彼以外の5人は皆女の子であった。彼女らは皆未婚のまま共に生活し生涯を終えた。ウェインが13歳のときに妹の一人が精神病を患い療養所へと送られている。


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時代の流行に追いすがろうとする人間社会に対する風刺や皮肉を塗した、擬人化された猫を描いた彼の作品は世間から高い評価を受けた。しかし、作品の人気の高さにも関わらず、ウェインは常に金銭に困っていた。

人気に陰りが見え始めるのと歩を合わせるようにして精神的にも不安定さが増していった。「チャーミングだがちょっと変わった人」と評価されることの多かったウェインは、次第に現実とファンタジーの見分けがつかなくなっていき、何を言っているのか周囲のものにも理解できないことが増えていた。ウェインの行動や言動は悪化の一途を辿った。ウェインは妄想に苦しみ、優しい性格であった彼が疑い深く敵意に満ちた性格へと変貌してしまった。

1924年、彼の言動、そして暴力に耐えきれなくなった姉妹によって、ウェインはスプリングフィールド精神病院の貧困者用病棟に収容された。



以下は統合失調症に罹患した後の猫の絵である。

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統合失調症が悪化するにつれ、猫の輪郭は崩れ、まるでフラクタル図形のような抽象画に移行していく。それでも、見ているものに底知れぬ不安を与えるのは、ウェインが描いているのは「猫」そのものであって、抽象画では無いからなのだろう。ウェインには、猫が、輪郭すら危うい抽象画のような形に見えたのかもしれない。絵の中に現れる反復、色使いから感じられる、不安や、周囲に対する敵意、裏返しに自分に跳ね返ってくる孤独。




それでも、統合失調症では死ねない。
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統合失調症とは内因性精神病で、現実と非現実の区別がつくという意味である現実検討能力が部分的・可逆的に障害される。主として思春期に発病し、特徴的な思考障害、自我障害、感情障害、人格障害を主な特徴とし、多くは慢性に経過する原因不明の疾患。

末期は無く、根気良い適切な治療で統合失調症は改善される。適切な治療さえ受ければ最終的に快方に向かう事が多い。
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William Utermohlen(関係性の破壊)

William Utermohlen(ウィリアム・ウテルモーレン)、1933年、アメリカ・フィラデルフィアでドイツ人の家族に生まれる。
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<上記は1967年に描かれた自画像>


彼の名前が世界に広まるようになったのは、1995年、アルツハイマー型認知症(dementia of Alzheimer type)を発症してからとなる。
アルツハイマー型認知症を宣告されてから後、彼は妻の支えを受けて、専ら自画像を描き始めるようになる。

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William Utermohlenのノートを見ると、1996年には既に自分の名前すらも書けなくなっていたことが分かる。
以下は、彼の描いた自画像の変遷である。


1996年の作品
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1997年の作品
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1998年の作品
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1999年の作品
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2000年の作品
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鏡に映っているニンゲンが誰だかわからず、絶望的な孤独の中、名も無い自画像を淡々と描き続けた。


自我と関係性の破壊。アルツハイマー型認知症の侵攻は人間たらしめている根底を崩し去る。


他のアルツハイマー型認知症の患者に比べると、超人的な執念で絵を描き続けたウィリアム・ウテルモーレン。
それでも、絵は荒くなり、遠近が歪み、色を忘れ、描いている対象が何かも分からず、会話も出来ず、全てにおいて理解・判断力が失われ、目の前に居る妻が一体誰なのかも忘れ、感情を失い、動かなくなり、四肢が硬直し、嚥下や排泄のやり方も忘れて、死ぬ。

电子美术馆(2)Zdzisław Beksiński(忘却と損壊の画家)

Zdzisław Beksiński。1929年2月、ポーランド南東部のサノク誕生。ナチス・ドイツによるホロコーストの生き残り。
祖父や父が建築関係者ということで、クラクフ工業大学建築設計学部に入学、卒業後は建築業務で現場監督をするも不満を抱き、芸術の道へ進むこととなったそうです。
1998年、妻が他界。
1999年のクリスマスイブ、息子が鬱病により自殺。 
2005年、自宅にて2人の強盗により殺害されます。使用人の息子とその友人とが、この犯罪の直後に逮捕されました。Beksinskiは以前、この若者からの借金の頼みを断っていた事が知られています。

作品の一つ一つから強烈な、ややもすると過剰な物語性を想起させますが、しかし彼はどの作品にも一切題名をつけませんでした。作品名は全て「no title」です。

破壊。損壊。死。陵辱。愛。対象を替えても根底にあるテーマがぶれることはありません。文字通りの「地獄」たるホロコーストを生き延び、また社会主義体制下での弾圧と蜂起。世間体ではどう繕っていたか知りませんが、彼は本質的な所で神を信じることは無かったのでしょう。甘美な死の誘惑と生の生臭さ。心の中に広がる広大な虚無と絶望。Beksińskiの魂を想うと、いつも胸が熱くなります。

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リラックマのお部屋

プロフィール

teng jing

Author:teng jing
上海在住。公認会計士から経営戦略コンサルタントへ。

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